空間がコンサルする医院
- やよい歯科医院
- 須呂 剛士 先生
私はもともと「シンプルだけれど上質」という空間が好きなんです。はじめてジョイントセンター様のデザインされたオフィス(義兄の診療所である福岡市天神の「歯科河原英雄医院」)を見た時は大げさでなく衝撃を受けました。洗練されていて落ち着きがあり、派手ではないけれど飽きのこない空間。まさに一目惚れです。
当医院は大分県佐伯市という本物の田舎にありますが、そのオフィスを世界のどこに持っていっても通用する、医療技術・ホスピタリティ・空間の揃った医院にしたいというのが私の夢で、その診療空間を新しくつくるにあたって、今回、建築から内装まですべてをデザインしていただくことができました。
私からお願いしたことのひとつは、外観は中が想像できないようになるべくシンプルにして、診療室内を非日常の「別世界」にして欲しいということ。
もうひとつお願いしたことは、「全てを収納する」ことです。たとえ診療中であっても、器具や医療機器を隠して患者さんの目に触れないようにしたい。
物が常に収納されていて表に出ていないと掃除がしやすく、医療施設にとって最も大切な清潔さを維持しやすいのはもちろんですが、「歯科」を連想させるものが何も置かれていなければ、患者さんが抱く「歯科医院に来ている」という視覚から生まれる恐怖感を減らせると思うのです。
デザインをするにあたって原兆英先生から、当医院新築のテーマとして、
・始まりへの恐怖感を期待感に変える空間をつくる
・患者さんが治療を受ける心理へと自然に切替えられる心理的スイッチをデザインする
というお話をしていただきました。空間をこのような言葉で表現できることに新鮮な驚きを感じたのを覚えていますが、完成した診療室はその時の私の想像をはるかに上回るものになりました。
手漉き紙を大胆に使用した空間は、植栽やアート、BGMにいたるまで全てをコーディネートしていただいたこともあって、隅々まで統一感のある、落ち着きとやさしさ、あたたかさを感じさせるものになりました。天窓から降り注ぐ自然光と間接照明、手漉き紙を用いたパーティションの明かりという光の演出が、やわらかな空気感を生んで、この診療所で過ごすことがとても心地よいです。
また、以前の診療所では花を飾ったり、アクセントにちょっとした小物を置いたりしていたのですが、この空間にはその必要がない。診療ユニット後方にある長さ6メートルのキャビネットの上などスペースはたくさんあるのですが、何も置かず、診療所の中は今でも引き渡しの時のままです。何も足さず、何も飾らなくていい、それほど完成された空間なのだと思います。
患者さんからは、「歯科医院ではないみたいで怖さや不安が和らぐ」「人に教えたくなる」「来院が楽しみ」など最大限の評価をいただいています。それから、院長である私の雰囲気と空間がとてもよく合っていると多くの方がおっしゃってくださいます。
須呂剛士先生より
開院1年後のメッセージ
開院日:2010年12月15日
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